電子版ジャンプを購入し、毎週月曜日にドキドキしながら、次回予告に「ジャンプスポーツ漫画賞受賞者発表」の文字が載っていないかを確認している乃樹愛です。
この話は結果が出てからお話しようかと思っていたんですが、結果が出る前にお話ししないといろいろ混乱させてしまう部分もあるかと思ったので、お話してしまおうと思いました。
実は今年の5月に開催されたコミティアで「キング・ウルフ」を週刊少年ジャンプに持ち込んでいました。そこで担当さんがついて、その担当さんと一緒に作った作品が「ホワイトホーク」という今回のジャンプスポーツ漫画賞に別名義で応募したものでした。
経緯をお話しますと、その持ち込んだ「キング・ウルフ」も週刊少年チャンピオンで担当さんがついて、その担当さんと受賞を目標に一緒に制作していたものでした。担当さんは面白く読んでくださったのですが、結果がまっっったく振るわず「次はプロレス以外の作品を…」と言われておりました。(こういうことは結構あるので、私は担当さんがついても結果が出るまでは「担当さんがついた!」とお伝えしなくなっていきました)
それでも諦めの悪い私は、やっぱりどうしてもプロレスで漫画が描きたかった。プロレス歴は浅い私ですが、プロレスラーさんたちにたくさん励まされました。苦しい時、リングの上で戦う選手たちを見て「また明日からも頑張ろう」と今でも日々勇気をもらっています。
そんなプロレスの魅力をもっとたくさんの人に知ってほしい。私が人よりちょぴーーっとだけ得意な漫画を使って、プロレス業界に貢献したい。だから、もう一度だけプロレスを描かせてくれそうな媒体を探して持ち込むことにしたんです。
ただ、チャンピオンで担当がつく前にも、いろいろ持ち込んでたんですよね。けど「野球やサッカーやバスケならいいですけど…」「そもそもプロレスってルールもよくわからないし…」という反応で、全然相手にされなかった。その時にビビって持ち込まなかった一社を除いて。
もちろん、自分で描き続けることも考えました。「最初は誰にも読まれなくても、描き続けてればそういう道から拓けてくるのかも…」と思ったりしていましたが、それではプロレス業界に貢献するのにあまりにも規模が小さすぎるし、現実問題として生活が成り立たないので漫画家業を諦めなくてはなりません。
だから「これでダメだと言われたら、プロレスを描くのは諦めよう」と思って、あの日持ち込まなかった週刊少年ジャンプ編集部に持ち込んだんです。「何もしないで諦めるより、コテンパンに言われてから諦めよう」と。それで5月のコミティアに持ち込んだんです。
目の前の編集さんが「キング・ウルフ」を読んでいる間、「あのジャンプに持ち込んでいる」という高揚感と「これで私のプロレス漫画が終わりだ」という絶望感で、その場から早く逃げ出したいと思っていました。編集さんの後ろにあるデカいシャッターのてっぺんを眺めながら「ボロクソに言ってさっさと諦めさせてくれ」と。
口を開いた編集さんは「キング・ウルフを他の賞に出したか」問いました。私がダメだったことを伝えると問題点を指摘し始めたんです。その指摘がものすごく的確で、深く感動したのを覚えています。でも、メモを取りながら「何を真剣に聞いてんだろ。これで終わりなのに。」と、心の中で自分を嘲笑していました。
それから「なぜプロレスだったのか」を聞かれました。さっきこの記事でお話した”プロレスへの感謝を伝えるためだ”と話しました。話しながら、目に涙が溜まってて。今思えば、不甲斐なさだったんだと思います。口では「プロレスに恩返したい」と言いながら、何もできていない自分。何の力も経験も知名度もない自分。そういう自分が嫌で嫌で。しかも、それを初対面の編集さんに今にも泣きそうにな顔で打ち明けてる恥ずかしさと惨めさ。ツラかった。全部がツラかった。
すると、その編集さん「今度スポーツ漫画賞をやるんですけど応募してみますか?」と言ったんです。「スポーツ漫画は本当に作るのが大変です」「だから熱意が必要なんです」と。「もちろん熱意だけじゃうまくいかない部分もあるだろうし、私みたいにプロレスを知らない人でも面白いと思えるものを作る必要はありますが、それでもよければどうですか?」と。
震えた手で名刺を受け取りました。「もう少し頑張ってみてもいいのかもしれない」と。
その日に終わるはずだったものが、1枚の紙で繋がって。その果てにできたのが今回の「ホワイトホーク」です。この道がもう少し長く続いてほしい一心で描いて、本名になるべく近い別名義で提出することで、自分なりの覚悟の表明をしたかった。
このような経緯で応募したので、正直ここまでこれたこと自体がもう奇跡みたいなものなんですよね。「これでダメならしかたない」と思えるくらい。いや本当はもっと前に諦めてたはずだから、なかったはずの選択肢が今手元に残っているだけで幸せなんだ、と。そう思うんです。
現時点で、結果はまだ担当さんから伝えられていません。来週の告知にも載ってなかったから、再来週30日の月曜日に発表になるのかな?(23日発売号が年内最終号らしいので結果は来年以降っぽいです)
もし連絡が来なくても、結果を誌面で確認するまでは、じっと待っていようと思っています。
それに、非常に有難いことに、来年はweb媒体にて2作品の読切掲載が決まっております。「ダメだったらこっちで…」というわけでは決してありませんが、今回の結果がダメだったとしても今の私の漫画を必要としてくれている人がいます。その期待に応え続けることで、いつかきっと何らかの形で「プロレス業界に貢献すること」もできるんじゃないか、と。
最後までこの記事を読んでくださった乃樹愛の読者のみなさん。結果次第で、いろんなことが変わるかもしれないし、変わらないかもしれないけど。どんな結果になっても、みなさんと私のご縁が続く限り応援してもらえるように頑張ります。ここまで来れたのは、みなさんのおかげだから。本当に。
21日でデビュー7年目です。お気づきの方も多いかと思いますが、ブログのヘッダーの花。あれ活動の年数になってるんですけど、まずは10本。いつか20本、30本も見れたらいいなぁ。
これからもよろしくお願いします。
乃樹愛