登場人物

漫画を描くことが大好きで、4コマ漫画を描いてきた。これからは、もっと漫画のノウハウを知って上達させたい。漫画家になるのが夢。

独学で漫画を描いてきた新人漫画家。出版や連載を経験しているため、漫画に関するノウハウを持っている。
「共感要素」を「ゴール」にする

それじゃあ、前回の続きからやっていきましょうか。

はい!よろしくお願いします!

かくちゃんは「印象に残ってる思い出話」とか、「最近起きた幸せだったこと・嬉しかったこと・楽しかったこと」はあるかしら?

んー…そうですねぇ…

あ!最近、ケーキを食べたんですよ!子供の時から、誕生日に家族で必ず食べるケーキなんですけど。高校生になってバイトできるようになって、初めてのお給料で自分で買って家族で食べたんです!

あら。とっても素敵なエピソードね。この話をそのまま漫画にしても素敵だけど、ここは「ひとひねり」したいわね…

かくちゃんは今の話、どういうところが特に思い出に残ってる?

んー…昔は自分で買えなかった思い出のケーキが、大人になって買えるようになったこととか…初めてのお給料で買ったケーキで家族を喜ばせることができたこととか、かな…

これは「ポジティブな共感要素」であり、「メッセージ」に落とし込むことができそうね!

…どういうことですか?

このお話って、かくちゃん以外にも「幸せだなぁ」って思う人がどこかにいると思うの。もちろん、このお話に限ったことじゃないわ。

たとえばだけど「アルバイトをしていたら、お客さんから感謝の言葉を言われて嬉しかった」とか「疲れている時に、たまたま好きなアーティストの曲が流れて癒された」とか。「落ち込んでる時に友人から励まされて元気が出た」とかね。とにかく、あげると数限りなーくあるんだけど…どう?想像したら共感できそうじゃない?

はい!なんだか、こっちまでほわほわしてきます~

つまりね、人間が「幸せを感じるとき」「面白いと感じるとき」「楽しいと感じるとき」「癒しを感じるとき」っていうのは、ある程度決まっているのよ。

もちろん、その人の価値観や環境、住んでいる国や文化によって違いが出てくることはあるけどね?

路上のねこちゃんを見て「可愛い」って思うとき…みたいな感じですか!?

そう!その通り!

つまりね、「△△って幸せだよね」「〇〇って嬉しいよね」っていう「メッセージ」が、そのまま物語の「ゴール」に設定できちゃうってわけ。

えー!?「ねこが可愛い」ってことが、物語の「ゴール」にできちゃうんですか!?

そう!「ケーキっておいしいよね」とか「友人に励まされたら元気が出るよね」とか。そういう些細なことで全然いいのよ。

「猫が可愛い」っていうメッセージを決めたなら、猫が出てくる漫画を描けばいいし。「友人に励まされたら元気が出るよね」っていうメッセージを決めたなら、友情が生まれそうなキャラクターで漫画を描けばいい。

こんな風に「メッセージ」が決まれば、ある程度内容も決まってくるってワケなのよ。

なるほど~!!!

……

…ん?どうしたの?

あ…いや…今ふと思ったんですけど…共感してくれる人がいるってことは、そうじゃない人もいるってことじゃないですか?

「ねこを可愛いと思う人」もいれば、「ねこを可愛いと思わない人」もいるってことですよね。昔ねこにひっかかれちゃった、とか。そういう過去があるせいで苦手になっちゃったとか…

そういう人たちが「ねこっていいよね!」っていう私の作品を見たら…私、その人たちのことを傷つけちゃうかもしれませんよね…?

かくちゃんは…とっても優しい子なのね。

うん、そうね。それって、ものすっっごく大切な視点だと思うわ。表現はね、人を救うばかりじゃないの。描き続けていれば、誰かを傷つけることは必ずあるわ。…私も、そう。

コミク先生…

「自分ではポジティブだと思ったメッセージ」でも、受け取る人によってはものすごく「ネガティブ」だったりする。かくちゃんが例に出してくれた「ねこ」みたいにね。

たとえば「家族っていいよね」って、自分では「ポジティブだと思ったメッセージ」も、家族仲が悪い人からすると「いやいや、それは違うよ」「家族の仲が良い人だから、そう言えるんだよ!」って…傷つけてしまうこともあるのよね。

…悲しいですね。

けどね。「自分がいいと思ったものが他の全員にとっていいものである」ってすごく理想的なことだと思う反面、ちょっと危険だと私は思うなぁ…

危険?

かくちゃんの苦手な食べ物ってある?

トマトです…どうにも中の果汁が苦手で…

じゃあ、かくちゃんはトマトがこの世からなくなればいいと思う?

え……!!!

これからはトマトを一切見ない。知らない。そんな世界になってほしいと思うかしら?

いや…それはさすがに自分勝手すぎる気がします!!!

私はトマト苦手だけど、好きな人もいるわけだし。トマトをつくってる人とか、トマトのお店を開いてる人とか…きっとものすごく悲しむと思います。そもそも私がトマトを食べなければいい話だし「この世からなくなればいい」とまでは思いません…!!!

そうね。その通りだと、私も思うわ。

それに、苦手なものがあるから、好きなものがもっともっと輝いたりするものなのよね。太陽があるから、月があるように、ね。

そういう意味で自分の嫌いなもの・苦手なものだからって、全部排除しようとするのは、ちょっと危険だと思うのよ。

なるほど…!!!

だからね。かくちゃんはかくちゃんの好きなものを思いっきり表現していいのよ。

怖いかもしれないし、とても勇気のいることかもしれない。それでも、かくちゃんの作品で救われる人…そうね、自分自身さえもかくちゃんの作品で救うことができる。だから、一緒に頑張りましょうね!

コミク先生…!!!

さ!次は「ネガティブ」でメッセージを考えてみましょうね。

はい!がんばります!
今回のまとめ
- 思い出話から「ポジティブな共感要素」を探す
- 「幸せ」「面白い」「楽しい」「癒し」は共通していることが多い(※例外あり)
- 「メッセージ」が決まれば、内容も決まってくる
- 自分の「好き」を思いっきり表現しよう!